話しかけたかった

　アイドルを評価する基準には色々あるけれど、僕はなるべく容姿にこだわらないようにしている。と言うより、アイドルはかわいいのが当たり前の今、ほとんど意味がないポイントだ。だから、楽曲の良し悪しはもちろん、いかに真剣に音楽に取り組んでいるかを感じ取るように心がけている。だけど、この曲を歌っていた頃のナンノは別である。とにかくかわいかったし、曲を超越して輝いていた。ちくしょう、アイドルの世界にはこんな奇跡だって起こるんだぜ。
　曲の内容は目新しくないけどナンノの元気で明るく振るまう声が、彼との偶然の出逢いを夢見ておしゃれを欠かさない少女の気持ちを哀しく伝えている。すべて過去形で語られる詞も味わい深い。彼の名前さえ知らないままなんだろうな。この恋はナンノをひとまわりもふたまわりも大きくしたに違いない。
（大竹健祐）