青い風のビーチサイド

　“青い風の季節”は短かった。それだけにやっぱりこの曲は特別扱い。当時まだまだ笑顔の少なかった典子が、等身大で自然に歌っていられる時間がもっと欲しかったな。
　次々と季節を変えていく典子に僕たちはとまどいすら感じていたけれど、それぞれの思いで泣き虫の典子を見守っていた。少しだけ頼りない僕たちは、今日こそは「キミが大好きだ。」と言おうとするんだけど言えない。言えないままに“さよなら”だ。本当はもっともっと夏を楽しんでいたかったのに。
　短かった夏はもう遠いけど、この曲が放つ色たちは今もその輝きを失っていない。聴くたびにあの真っ赤な麦わら帽がよみがえってくる。まえよりもずっとあざやかに。
（宮崎博）