松本伊代に嫌気がさし始めた83年のある夏の日、たまたま通りかかった新宿紀伊国屋で吹田明日香のイベントに遭遇した。私は衝動的にLPを買い、列の最後尾についた。彼女がこの時既に女子大生であったことを知ったのは帰宅後のことであった。 大学進学後にアイドルになったということで、私の周囲は彼女を好奇な目で見る者が多かった。でも私は『本人が幾つであろうと良いものは良いのだ』というつもりでいた。おそらく彼女はものすごく純粋にアイドルというものを考えていたのだろう。このこだわり方はその証しだ。 LPの中には徹底的にクサイ曲もあり、決して名盤とは言えないが、シングルとなったこの曲は光っていた。活動的なものばかりが夏の風景ではないことを的確に教えてくれる。独特の声も耳になじむ。今でも愛聴盤だ。 (松田勇輝)