<< ターンテーブル:1986年ベスト20 >> |
2001年9月23日@おれんじ★てぃー編集部伊豆オフィス |
順位 | 曲名 | 歌手 | くまは | だいさく | nattomaki | ネコ八郎 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 教科書のイニシャル | 佐野量子 | 4 | 4 | 3 | 4 | 15 |
2 | HEY! BABY | 森下恵理 | 2 | 3 | 5 | 3 | 13 |
3 | Desire | 中森明菜 | 2 | 4 | 3 | 4 | 13 |
4 | 瞳にピアス | 佐野量子 | 4 | 3 | 3 | 3 | 13 |
5 | COOL | 若林加奈 | 4 | 2 | 5 | 1 | 12 |
6 | MAY | 斉藤由貴 | 5 | 2 | 2 | 3 | 12 |
7 | ガラスの幻想曲 | 島田奈美 | 3 | 2 | 3 | 4 | 12 |
8 | 乙女日和 | 水谷麻里 | 2 | 3 | 4 | 3 | 12 |
9 | 瞳で片想い | 八木さおり | 4 | 1 | 2 | 4 | 11 |
10 | JUST | 桑田靖子 | 2 | 2 | 3 | 4 | 11 |
10 | ひこうき雲 | 志賀真理子 | 2 | 3 | 4 | 2 | 11 |
12 | Hearbreak Cafe' | 山瀬まみ | 2 | 0 | 3 | 5 | 10 |
13 | 16粒の角砂糖 | 西村知美 | 2 | 5 | 2 | 1 | 10 |
14 | 青い靴 | 芳本美代子 | 0 | 4 | 2 | 4 | 10 |
15 | 青いスタスィオン | 河合その子 | 0 | 3 | 3 | 4 | 10 |
16 | 失恋ライブラリー | 紘川淳 | 1 | 4 | 3 | 2 | 10 |
17 | 花の精 | 沢田玉恵 | 2 | 4 | 2 | 2 | 10 |
18 | 南の風・夏少女 | 浅倉亜季 | 2 | 4 | 2 | 2 | 10 |
19 | 青空のかけら | 斉藤由貴 | 2 | 3 | 2 | 3 | 10 |
19 | 儀式(セレモニー) | 松本典子 | 3 | 2 | 3 | 2 | 10 |
19 | セシリア・Bの片想い | 山瀬まみ | 3 | 2 | 2 | 3 | 10 |
19 | 深呼吸して | 渡辺満里奈 | 2 | 3 | 2 | 3 | 10 |
nattomaki |
1986年は飽和の年でした。作家が供給できる作品数のしばりから作品の質が低下があらわとなり。ユーザーの伸びが、楽曲の供給数の伸びについていけなくなった感があります。 その中で、曲を制作するスタッフとの関係を既に築いているデビュー2年目以降の歌手の曲に佳作が多い印象を受けました。 得点は0点が10点法で5点に該当、2点なら佳曲。3点以上はnattomaki推薦曲といったところです。 4人の合計で10点以上獲得した曲に対しコメントを付けます。 「深呼吸して」 デビュー曲だけに力を入れているはず、…でも力が入った感じはしない。良く言えば肩の力が抜けている感じですね。力が抜けすぎて、“スーパーアルト”な声が活躍していない感じ。 「セシリア・Bの片想い」 メロンはランクインせずセシリアが来ましたね。イチゴの匂いのメロンは甘すぎたのか。これといって特筆すべき点はない曲ですが。垢抜けない感のメロディーに、田舎然とした詞が相まって、はっきりと思い出せずにいたもやっとした懐かしい景色を思い出しているかのようで、長く生きすぎて思い出が多くなった世代には訴えかけてくるものがあるようです。 「儀式(セレモニー)」 さすが中島みゆきさんの作品は詞にも曲にもインパクトがあります。声がこの楽曲にミスマッチな感じですが、おかげで、濁流の上にかかる吊り橋に佇む美少女、みたいなインパクトが出て良いですね、だってわたしなら美少女一点を注視してしまいますから。 「青空のかけら」 斉藤由貴さんはどうしても「卒業」をイメージしてしまいます。同じ松本隆氏の作となるとさらに。 対抗できるとしたら、森雪之丞式絵の具で色濃く描写された「白い炎」あたりでないと。 「花の精」 サビの印象が強い曲。 そのサビへの展開の無理やりさがやはり印象に強い曲。 サビにはたどりつくまでのこの曲は、膨らませる前のモンゴルフェ式の熱気球のごとく、飛び立つ前の準備のちょっと統制の取れない一生懸命さが感じられる印象ですが、サビには気球が風に乗って飛び去って行くクライマックスを、サビの後は燃え残った火と散乱した準備のための道具類のごとき虚しさを感じてしまうのです。 要はサビで持っている曲、それだけにサビは良いです。 南の風・夏少女」 ローソンのコマーシャですな。南の風というわりには、暑い感じはしませんね、むしろ涼しい感じ。芹澤好きのわたしとしてましては、芹澤臭が薄くものたりません。 わたしは「オータム・リップス」のほうが好きです。 「失恋ライブラリー」 曲は故木森敏之氏の作品。切なげなメロディーが特徴で好きな作家でした。この曲も氏の得意なメロディーが、紘川さんの声の質と合っておりまた、こちらも故安井かずみ女史詞も曲をがっしりと受け止めています。ラジオのコマーシャルで盛んに流れていた1コーラス目サビの部分のイメージの強いのですが、わたしは2コーラス目の詞が好きです。1コーラスからストーリーを組み上げて、2コーラス目の詞がこの曲の物語りの全てを語ってくれるからです。 全体的に軽さを感じる曲です。 アレンジも軽い、隙間が多い音場に、アコーディオン風の音が軽さを演出しています。 軽いのが悪いと言うわけではありません。これはきっと計算された軽さなのでしょう。だから切なさも軽くなるという。 「青い靴」 音を詰め込み過ぎてちょっと暑苦しい感じ。芳本さんの涼しい系の声をもってしても喉の渇きを覚えます。 この曲は、彼女の声質には決して合っているとは思えないのですが、キャラクターには合っているので、ステージ的にはハマるのですよね。 「16粒の角砂糖」 タイトルからしてネタにされそうです。歌詞の内容も突っ込みどころが豊富。 ネタも真面目に演じてしまいそうなところが西村さんのキャラですので、彼女に合っている詞と言えましょう。 ヴォーカルに関しては、曲の難度が彼女の歌唱力としっくり合っていない気がするのですが。 「Hearbreak Cafe’」 アレンジが良いっすね。イントロからしてわたしの好きなブラスの入れかた。彼女の力が入り気味になる歌唱法を余裕を持って受け止めるオケ。歌詞はサビの部分しか耳に入って来ませんが、そんなことは問題ではありません(笑)。 「ひこうき雲」 の曲を再生すると、どしても聴き入ってしまいます。良い音で真剣に聴きたくなります。 細切れに切り刻んでもう一度組み立て直して表面をペンペンしてはい一丁ってな音ではなく、もう生では聴けないのですから、せめて彼女が歌った声をマイクで拾ったままの波形が録音されているアナログシングル盤を、高級オーディオで聴きたくなる曲です。 「JUST」 思いのほか評価が高かったですね。ノミネート者としてはうれしいところです。 ひねりも無い一本調子な曲です。が、そのまっすぐさが、“後ろをふり向かない”と主張する詞と一体となって、街灯かりを背に、夏の夜を海に向かって走っていくと、やがて潮風が頬に心地よい強さの風を当ててくれるようで、好きです。 「瞳で片想い」 マイナーコードが攻めて来る曲です。単調な曲の展開にそろそろ飽きてくるかな?というサビの部分に“皮肉”というフレーズをもってきた大胆な詞が曲に重厚な重みをもたらしており、1コーラス目だけで評価するとなかなかの出来えなのですが、2コーラス目の詞がどうにもふわついた感じで、曲の統一感を乱しています。ちょっと残念。 「乙女日和」 しっとりとして落ち着いた曲。好きな曲です。 筒美氏にしてはめずらしく、オーソドックスな構成です。イントロはハ長調のCで始まるのですが、曲の基調はイ短調のAm。映像で表せばセリフが無いであろうシーンを描写する歌詞を、淡々とサポートしています。そしてハ長調に転調するサビの4小節が、曲の中の一瞬の晴れ間=乙女日和を表現しています。 曲先なら詞が見事、詞先なら曲が見事というべきでしょう。 「ガラスの幻想曲」 内向的な優等生のような曲。出来は良けれど、それほど面白味も無い。欠点は、これといったものは無く、強いてあげればちょっと考え過ぎがちなところ、といった感じです。 “幻想曲”というわりには幻想曲でない曲&オケに、“幻想曲”というタイトルをつけてしまったので“幻想曲”的な歌詞にしようと考え過ぎ、といったところですね。 考えないで聴くのであれば、この曲が持つ「硝子坂」のimageの香りに懐かしさを感じたりする世代には、親しみやすい曲かもしれません。 「MAY」 つかみどころが無い曲ですね。とにかく詞の意味がよくわかりませんし。作曲の堀川さんにも、これだというイメージがないというのもありますが。 そのつかみどころが無さが、斉藤さんと合っているのかもしれません。「卒業」のときの透明感のある声が「白い炎」のときには太くなり、そしてこの曲の歌う声には乳白色のやわらかさがあります。 さて、詞の意味など考えず、斉藤さんの声に身をゆだねるとしましょうか。 「COOL」 彼女の声が好きでした。特にこの曲は、そのタイトルどおり、彼女の涼しげな声と合っています。 淡々とした曲です。淡々とした悲嘆があふれだそうとする詞を、かみしめるようにリズムが刻まれます。感情の起伏の表現はメロディーではなくアレンジのほうにまかされています。 アレンジも、音に金がかっているとは言えませんが、その構成にはすきまが無く、Eメロのモチーフをそのままエンディングにつなげる作りは、歌詞の中で唄い尽くしながらも押さえていた悲嘆が、唄い終わったエンディングであふれ出すという、見事な効果を生んでいます。 音がバリバリに割れているのはいただけませんが、マスターの音から歪んでるようなので如何ともし難いですね。音質的に、デジタルレコーディングになっていると思われます。この時期のコロムビアのスタッフはデジタルレコーディングに習熟していなかったのでしょうか。 nattomaki推薦曲。 「瞳にピアス」 「教科書にイニシャル」の次に発売された作品。点は2曲とも同じにしたわたしではありますが、詞も曲もアレンジも「瞳にピアス」のほうが「教科書のイニシャル」より洗練されており、お上品に仕上がっていると思います。 秋元康氏の詞が描く、重ねたスチール写真を引き抜くように綴られたセリフの無い物語は、曲が流れる間だけ夏が過ぎたばかりの静謐な海岸に時間の流れをあたえるのです。 ただ、すこしばかり現実離れしたその物語の主人公になるのは、ちょっと無理かなと思えてしまうところが、「教科書のイニシャル」の後塵を拝した原因のような気がします。 「Desire」 みなさん知ってらっしゃるでしょうから、コメント不要?。 えーそりゃーもう良い曲ですよ。ここにランクされるくらいですから。 ビジュアル派手だったので映像が無いと楽しさ半減?。あ、見なくて頭の中に映像が浮かんでくるからまっいっか。 「HEY!BABY」 RVCレコードの女性アイドルを担当するディレクターの2枚看板は、バタクサ系の相川氏と侘び寂び系の岡村氏。相川氏は石川秀美さんなどの担当で、森下さんもそのイメージどおり相川氏の担当でした。 竹内さんが作るこの曲も、バタクサ系の相川氏得意の路線の“陽気なアメリカン”って感じのポップス。でもクサイというほどしつこくはなかったのは、鈴木氏のアレンジがレモンの雫のように濃厚な詞、曲と声をまとめていたからでした。 思えば初期の堀ちえみさんも鈴木氏のアレンジ。氏のアレンジは臭み消しに最適だったのですね。 この年のnattomakiベスト。 「教科書のイニシャル」 1位になってしまった。また、偏狭なヤシとか言われんだろか。(笑) 学生という身分を終えてからもしばらくの間は、この曲の作り出す世界が自分の皮膚としっとり親和する感覚があったように思います。わたしも最近ではさすがにそういった感覚もなくなり“以前そう感じていたなあ”、と頭の中で考えるだけになってしまいました。 この曲に高い点を付けた方々は、まだ皮膚感覚に夕暮れの空のほのかな温かさが残っているのでしょう。 上記以外でnattomakiが3点以上の点を付けた曲 「オータム・リップス」浅倉亜季 「ふ・りょ・う」大根夕佳 「早春期」尾崎仁美 「涙のハリウッド」河合奈保子 「ハーフムーン・セレナーデ」河合奈保子 「紫外線」沢田玉恵 「夢見るダンス・アウェイ」森恵 「心の扉」芳本美代子 |