前回(1982年ベスト)の反省にのっとって、今回は点数を辛目にしてみました。2点が10点法で7点になります。7点なら佳曲ってところです。
「さよならのカレンダー」
これはノーチェックでした。私は初物には甘いので、点数がちと甘いかも。でも良い曲ですね。
「雨上がりのサンジェルマン」
タイトルからはフレンチポップス然とした曲を想像するのですが、実は全くフレンチポップスではありません。松田聖子からの流れを汲む80年代のアイドルポップスとは一味違ったものにしようといった意図はうかがえる、といったところでしょう。
素直に伸びた声は彼女の特徴で、この曲の解放感を形作る上でも大きなポイントになっています。ビブラートをかけない唱法は意外に難しいものなのですが、それを自然にこなしているのは一つの才能でしょう。
上を向いた曲です。薄いアレンジは雲の晴れた空であり、詞は空に突き抜け、曲は虹をかけるでしょう。岸正之氏の代表作となるべき曲です。埋もれてしまっているのは非常に残念です。
「夏にフレッシュ。」
さわやかな曲のはずでなんです。アレンジはそうです。ストリングスの音は、湿度の低いそよ風のようです。
詞もそうなのでしょう。でも、“フレッシュ”を繰り返すのは少し野暮かもしれませんが。
そう、野暮なんですね。詞はおしゃれな単語でキメてるのですが。そして曲がそこはかとなく演歌くさいので、シーン1には、路肩に草が生えている田舎道をどうしても想像してしまいます。うーん、ほのぼのしてて良いです。
「夕暮れはLove Song」
失恋の歌なのに賑やかなアレンジ。悲しみを吹き飛ばそうってわけなのでしょうが、風だけ吹いて飛んでかなかったって感じになってしまいました。曲は、特にBメロは良いんですけどね、それだけでもかなり好きな楽曲です。
「青春のいじわる」
そうです、青春はいじわるなんです。否定できません。否定できないところを攻めてくる秋元先生はずるいっす。
菊池さんの声とアレンジのバランスがとれて心地よく聴けます。声が楽器と一体化してるってやつですね。楽曲としての完成度は非常に高いと思います。
「風のノー・リプライ」
盲点ですねー。こういう楽曲がエントリーされちゃうと上位に来ちゃうんですね。曲は悪くないです。スピード感と、ちょこっと泣きが入ったメロディーライン。でも、さらっと流れていってしまうので。もうちょっと緊張感あればさらに良かったところです。
「SUMMER EYES」
菊池さん2曲目。頭の中の整理では、この曲のが好きであろうとの予想しつつ実際聴き比べてみると、「青春のいじわる」のほうが楽曲としての完成度(詞曲の起承転結)が上だったんですね。
この曲、アップテンポになった分、緊張感-この曲の場合不安感-を高めるアレンジがされておりその点は申し分ないんですが、詞が、青春のいじわるさ加減にはかなわなかったのです。
「哀しみのレイン・トリー」
岡村有希子さんのデビュー曲。“レイン・トリー”って何でしょうか?、といつも思うのですがよくわかりません。曲の構成は実はオーソドックスともいえるアイドルポップスなのですが、アレンジと調和した冷えた感じのする声のためか、アイドルとの曲とは一線を画しているように感じるのがミソです。要するに華が無いのですが、地味でも厭きがこない良い曲だと思います。
「私MAILUWA」
わたしにとっては、“美人じゃないけど好みのタイプ”って曲です。
山本さんの声質も艶っぽくて好き。質量がある物体をつり下げて運んでいるような余韻のある歌唱法も都志見氏のメロディーに合っていると思います。
「シャワーfeeling」
歌い手さんの歌唱力に比べて、曲の難度が低いって感じです。
「北ウイング」
鈍重といった感覚の曲です。わたしの好みではありません。
林哲司氏の方法論からすると“サビは強く長く”ですが、そこがわたしとは合わないと思われます。
「パジャマ・じゃまだ!」
こちらも林哲司の作曲です。サビが林氏の方法論とは異なって、“強く長く”無くスタッカート気味なところが、逆に私好みなのです。アレンジも、私の好きな生音ではないのですが、耳障りということもなく、アニメ主題歌という狙いがしっかりしているので好感触。
「The Stardust Memory」
おもちゃ箱をひっくり返したようなアレンジ。キャッチーで一回聴けば印象たっぷりでしょう。ただ、何回も聴くと?…。ブリッジの部分がそこを救けているわけですね。
「H-i-r-o-s-h-i」
アレンジの印象が強い曲です。大谷和夫さんは、私が好きなアレンジャーの一人です。この曲は、大谷さんのカラーが良く出た佳曲です。
私にとって、大谷さんといえばストリングス。絵の具のついた筆が三次元の空間を滑るようにストリングスの鳴らして歌声の周りを彩って、いかにも、大谷さんのアレンジって感じです。石川秀美さんの「初恋通信」や、後で出てくる「東京Suger Town」と聴き比べてみてください。
「3秒体験」
曲の動機の部分も、サビの部分も、良いメロディーラインだと思います。特にサビはメロディーも詞もキャッチーだし。でも、なんだかしっくりつながって来ないんですよね。
「赤道直下型の誘惑」
わたしがアイドルの楽曲に期待する、-甘酸っぱさや青臭さや切なさの幻想-とは、最も離れた位置にある曲です。個人的には、特にアレンジの下世話な感じは耳障りです。
オリ通に、“極道直下型の迷惑”といったネタがありました。極道からすると迷惑ということで…。
「東京Suger Town」
この曲もアレンジが強い曲。芹澤氏らしくないというか、芹澤色より大谷色のが強く出ています。
オケの音質が悪いのがマイナス点。大谷氏の命のストリングスが乾燥さしたものを水で戻したような音になってしまっては…。
「センチ・メタル・ボーイ」
タイトルだけはインパクトがあるのですが、“センチ・メタル・ボーイ”とは何かというイメージが散漫。詩も狙いがよくわからないし。テクノでなく、ヘビィメタルなら分かりやすかったかも。
ヘッドセットで唄っていたパフォーマンスは良かった。
「ヤマトナデシコ七変化」
小泉今日子スタッフの企画力には敬服します。色モノになりそうな素材でも、時代の流れに乗ることでその時代の最先端にしてしまう。
“作詩、作曲、編曲、唄”で構成されたものというより“企画力の結晶”といった感じの作品です。この曲を聞くと、当時が思い出されます。
ただ、色物のポジションにあるものは、時代が過ぎ去るとやはり色物になってしまうのですが。
「涙のクレッシェンド」
楽曲は水準を超えてると思います。ただ、バラード聴かせるには、歌唱力が欲しい。歌唱力が無いなら、せめて説得力が欲しいところ。
着外でわたしのオススメ
「見知らぬ国のトリッパー」
落ち着いた淡青緑の色硝子のようになクリアな世界に、光にたとえればばソリトンのような、質感のある歌声が突き抜けていきます。音とは言え、壮観。
「東京メルヘン」
このヴァージョン、ストリングスがちとうるさい気がします。アレンジは、木之内オリジナルが、“2月の冷たい風は、厚いコートに身を包んでいてさえも、その隙間を吹き抜けていく”のに対し、こちらは“風も通らないほど厚く服とマフラーを着込んでいる”といったイメージです。木之内ヴァージョンのが詞の解釈に合致していると思います名曲は、やはり名曲でしょう。
「グッバイ・ガール」
「ボーイキラー」発声練習などをしたことがあり、歌唱力に自信がある人ならきっとこの曲を歌いたくなることでしょう。
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